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貴方を遠い人だなんて感じたことはなかった。好きだった頃も遠かったけれど、そんなのとは比べものにならないくらい、遠い。
なんて矛盾かと自嘲的に笑ってしまう。でも、違う。遠いの種類が、違うのだ。もう会えない遠さと、思いがぎりぎり届かなかった距離の遠さ。この遠さは距離からくるものではない。
悲しくて悲しくて悲しいはずなのに涙は一滴も零れなかった。そんな私のことを冷たいと、彼は思っただろうか。
死は、悲しい。
死が悲しいのは、もう会えなくなるからなのか、それとも別の何かがあるのか。だけど私にはその別の何かは判らない。彼ともう話が出来ないということが、とても悲しい。私にはそれが全てのようだった。
これが現実でなければいいと、何度思ったことだろう。だけどこれは紛れも無く現実だ。貴方は死んだ。彼は死んだ。
「うああああああっ!!」
彼が死んでから丸三日。私は初めて声を上げて泣いた。やっとこの世に産まれて来れたような、そんな気分だった。
例えばそれは産声のような
(今の私を見たら彼はどう思ったろうかなんて、考えるだけ無駄なのだと知っていた)(知っては、いた)
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