97984人が本棚に入れています
本棚に追加
異論があるはずもない。
あたしはすぐさま後ろに下がると、呪文の詠唱に入った。
この男が厄介なのだ!
空虚な目が如実にそう物語っていた。ヴァルハイドはロインを前にして歩みをピタリと止めた。
「どーしたよ」
『グルルルル……!』
様子を伺っているのか。
ロインの前で歩みを止めた影は左に移動した。
動きに合わせ立ちふさがるロイン。
今度は右に動く。それに合わせてロインが再び立ちふさがった。
しばしの膠着状態の後、
『ブルルォォォォォォォォォ!!!!』
苛立ちの頂点に達したヴァルハイドは右足を前に出し体を捻った。
遠心力のかかった尻尾がロインの左方向から空を裂き、薙ぐ。
攻撃を読んでいたロインは腰を落とし右から左に大剣を振り尻尾と打ち合った。
ガギィッ……ン
金属ではない硬質な物同士がぶつかり合う独特な音が大気をゆるがす。
両者が弾かれる。ヴァルハイドがその一撃で攻撃の手を緩めるはずがなかった。
あんなに硬く大木ほど野太い尻尾を鞭のようにしならせ再びロインを襲う。
初撃で弾かれた大剣を握り直し力を込め、右足を前に、腰を捻り再度横から薙ぐ。
目を疑う光景のはずだが、あたしは驚かない。今度ばかりはロインが競り勝ったのだ。
ロインの攻撃はまだ続いた。
最初のコメントを投稿しよう!