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あたしの横まで飛び退いたロインはヒュ~、と口笛を鳴らした。
「圧巻だねぇ」
言葉のわりに警戒は怠っていないらしい。
大剣を横に構え、すぐにでも動ける体勢をとっている。
あたりに肉の焼け焦げた独特の臭いが充満した。
――やったか!?
しかし、焼けたせいで立ちこめる煙を裂いて姿を見せたのは無傷のヴァルハイド。あたしの内心のガッツポーズを裏切る。
「うそっ!?」
「キレたな」
『ゴォォォォォ!!ルォォォォオォォオォォ!!』
ふさぎたくなくても両手で耳をふさいでしまう。
やつもあれだけの雄叫びを上げるのは労を要するのだろう。三者が硬直し動きを止める。
先に硬直が解け動いたのはヴァルハイドだった。
力の抜けたあたしに向かって一直線に進む。
これはいよいよヤバイ雰囲気だ。魔法を使ったあたしに対して相当腹をたてているみたいだ。
地響きのせいで足元がゆらぎふんばれない。
寸でのところでロインがまたもや割って入る!
ヴァルハイドも自身の体より数倍小さなロインを強敵と思い始めたのか、その大きな翼をもってして自らの動きに急停止をかけた。
そのまま翼で風を叩き、背中から空中に舞い上がった。
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