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ようやく動きを取り戻したあたしは宙を仰ぐ。
天で静止したヴァルハイドは忌々しげにあたし達を睥睨(へいげい)した後、首を後ろに引いた。
――あの動作は!
背中に冷たい戦慄が走る。
ドゥン!! ドゥン!! ドゥン!!
立て続けに三発の火炎球が空から飛来する。あんなものをまともに食らえば、本当に跡形も残らない。
ましてや横に飛んで避けたところで攻撃範囲は広い。
「あ……あぁぁ……」
何も考えられない。
考えるより早く体が動いた、なんて夢みたいな事起きないかな。死を予感した時にあたしに衝撃が走った。飛ばされる感覚。
後ろに流れる地面に体の右側をうったあと、転がる。痛みなど気にならなかった。顔を上げて何が起こったか、それを確認するとあたしは自然と叫んでいた。
「ロインッ!?」
飛ばされる前まであたしのいた場所に彼の姿があった。
大剣は利き腕でない左に持っている。あたしを攻撃範囲の外に逃がしてくれたんだ。それも相当遠い距離まで。
今そんな事したら……今そんな事したら!
三つの火炎球が、容赦なしにロインのいる地面に降り注いだ。
「……や……いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
天を突く勢いで灼熱の火柱があがると、遅れて地響きが地面を伝わる。
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