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ラ・ディリアで防いだ時にわかった事だけど、あれは本当にただの炎なのだ。球体だから、中に何か核となる物体があるのではないか。そんな考えを抱いていた。でも実際は核となる物など存在せず、球体を保っていたのはそれだけ濃縮された炎だから。
当たった瞬間に爆音を轟かせ、地面をえぐりとっていたのは正真正銘、炎の塊だった。
そんなものが三つも……。
ロインを中心に、彼の背後にあった森の一部ごと火炎球が襲った。
森を、地面を、大気を、炎の塊が膨れ弾け蝕む。
爆風と噴き上げられた土砂があたしにまで降り注いだ。
「ロイイィィンッ!!」
もう一度あたしは叫んでいた。体が動かない。動かせない。
なんとか這ってでもロインの傍に行きたかった。しかしそれも虚しくガリガリと爪で草の生えた地面を掴むだけ。
悔しい。悔しいよ……。
泥だらけの指先を睨む。この手が無力なんだ。
ロインのいた場所へと目をやる。あたしが足手まといだったんだ。
ぽつり
不意に頬をうつ一滴の雨水。なぜかそれが気になって仰向けに寝そべる。
ぽつり ぽつり
しだいに頬をうつ雨の数が多くなってきた。雨足が激しくなる。目尻からたれたものは涙か雨粒か自分でもわからなかった。
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