~ 炎 ~

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――王よ……     声?目を覚ますと手に伝う感触に違和感があった。ざらざらと言うか、ごつごつと言うか。岩肌のようでいて、無数の穴が表面にある褐色の地面。     「……ん」     うっすらと目を開き見えた光景は言うなれば“赤”。目の前に見える土は褐色だが、どこからかの光のせいで赤く見えたのだ。この触感だったのか。答えの見付かった一つの疑問が消える。     これだけではない。疑問はいくつもあった。俺は今どこにいるのか、何をしているのか、ここが何なのか、一人なのか、怪我はないのか……。     すぐには行動できずにいた。頭で色々な命令が交錯し要領を得ないでいる。我ながら情けない。     ふと、まだ剣技の修行をじじいとしていた時の事が頭をよぎった。幼い体に似つかわしくないクレイモアを片手に、その頃は師匠であったじじいと剣を打ち合う。俺が「じいさんには怖い事なんてねぇのか?」と聞くと「ある」と一言答えた。     じじいは続けた。「戦士として、自分の置かれている状況が把握できない時に真の恐怖を感じる」と。     「…………状況か。……よっ」     霞がかかったようにぼんやりする頭はまだ鮮明に機能していないようだ。俺が両腕で地面を押して上体を起こした時に初めて、「あぁ、俺うつ伏せで倒れていたんだ」と半ば感心したように思ったからだ。     「こりゃ重症だな」     自嘲気味に笑う。
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