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『ん?何をそんなに焦ってるんだ、王は』
「焦るに決まってんだろ!でなきゃあいつが……ニイナが死ぬんだぞ!俺みたく!」
余裕をぶっこいてるファタルガオラに俺は怒りを撒き散らした。乱暴にファタルガオラの肩を押す。
『だから、ここは王の精神世界。時の流れも現実のそれよりはるかに速い、何より王はまだ死んではいない』
「……えっ?」
死んでない?一つの安心と共に、ならなおさら早くニイナを助けに行かなければと俺はファタルガオラに突っ掛かった。
『ふむ。しかし、王よ。
今あの娘を助けにいって、無事に生きて帰れる保証などあるのか?
かつての王がしたように、王だけならばなんとか撃退する事は叶うだろう。
だがあの娘を庇いながら、それが可能か?
ましてや今のあの竜。
先ほど話をした復活しつつある邪竜ティアマトの影響を受けてしまい反転属性に陥っているではないか。
きっと、何かで起こった負の感情に付け入られたのだろうな』
俺は奥歯で苦いものを噛み砕いたような表情をした。
小難しい話は置いといて。ファタルガオラの言う通り、ヴァルハイドは人一人を庇いながらどうこうできる相手ではない。
かつての俺も死ぬ思いでやっと相手に傷を負わせられたのだから。
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