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『自分達よりはるかに力を持った危険因子を排除しようとする人間の気持ちはわかる。それが摂理。
だが体を蝕れ、心を蝕れ。
死んだ我が子の事を忘れそうでいる』
心が崩壊する。
『強暴だと思っていたか?王よ。違うな。ドラゴンは人やエルフの心よりずっと大きな心を持っているぞ。寿命も長いのだ、当然ながら思慮も深い。
しかし心の闇が広がる』
そうして付け入られる。
『侵食された今、もはや彼女が助かる道はない』
ならばいっその事。
気付けば、ファタルガオラの左半身の色が薄くなっていた。
『これは同胞である我の、そして彼女の願いでもある。
罪無き生き物を闇雲に殺す前に、心が完全に壊れてしまう前に。王よ!』
一際大きく紅蓮竜が叫んだ。
『我は王の事をよく知っている。
誰よりも町の人を思い、そして陰ながら守る。役に立つ。それだけ人間が好きなんだな。
ニイナとか言ったか。命に替えても娘を守った王の挙動と言動。
やはりあなたは我の王。
ドラゴンと同じく大きな魂と!揺るぎない意志を継ぐ者!
今一度聞こう。
我の力を何のために』
俺は目を瞑り、大きく息を吸った。そして見開き、空に吠える。
「守るべき者達のために!」
『……やはり、王は王。
我は王と……ともに……あ……』
椅子もろともファタルガオラが光の粒子となって消えた後、俺の両にはめた籠手がまばゆい光を放ち始めた。紅い放電が腕をおおう。
「こ……これが紅蓮竜の力……」
まじまじと両腕を見る。
アモールに造らせたヴァルハイド装甲の籠手の形状が変化し、燃え盛る焔のような、荒々しく波打っていた。色も赤紫より紅の割合が高い。
『聞こえるか、王よ。
姿を具現できなくなったが、意志の疎通はその籠手【アーム】を通してできる。
さぁ、あの娘を助けに行くぞ』
「おうよ!」
視界が白い世界で満たされる。次の瞬間には、俺の意識は現実へと戻っていた。
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