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焦げた空気がチリチリと鎧で覆われていない肌を刺激した。
かぶさっていた土砂を払い除けて立ち上がると、ヴァルハイドが今まさに仰向けになっていたニイナを踏みつけた瞬間だった。
トクン
心臓の鼓動が一つ。
同時に、俺の体から大気を震わす波紋が駆け抜けた。
「お……」
足の指先から頭に向かって“怒り”が走る。毛の逆立つのを感じながら、剣を持ち俺はヴァルハイドとの間合いをつめた。
「おおおおおおおおおお!!
その足をどけやかれぇぇぇぇ!!」
ようやく俺の存在に気付いたヴァルハイドが首だけをこちらに向ける。そして吠えた。何故俺があの業火の中生きてるのか驚いているようだった。
肉薄し、剣を真上から斬り下ろす。重量と筋力が重力に乗って一閃するのを寸でのところで脚力と翼を使って後ろに素早く退いた――
つもりだろうが、切っ先が僅かにヴァルハイドの右翼の部分に当たる。
とたんにバランスを崩し、勢いはそのままで墜落。地面を削り転がった。
『グブォォォォ!!グルォォォォ!!』
悔しそうに藻掻くヴァルハイドはしばらくは動けないだろう。翼の半ばまでにぱっくりと巨大な切り込みが入っている。もうあの翼は使い物にならないな。
自分でもどうしてそのような力が発揮できたのか、頭の中で収拾のつかないまま、しかしヤツはしばらくは動けはしないという確信があった。
「ニイナ!! ニイナ大丈夫か!?」
急いでニイナの元に駆け寄る。
そして自分の目を疑う光景を前に俺は、言葉を失うのであった。
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