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街にいるアンダーテイカー全てがギルドにある依頼を完全にこなしているわけではない。
自分に合った、自分になら遂行できる依頼しか基本的には受けない。
中にはチャレンジ精神で少しハードルの高い依頼を受けてみたりもする人もいるが、成功で終わるとは限らない。
毛嫌いされるモンスターの討伐や、簡単過ぎたり難し過ぎたり、遠方過ぎる場所だとかの依頼は残念ながら残っていってしまう。
そんな依頼内容は最終的に俺のような暇な人間が受けるのだ。
俺のように暇な人間なんぞなかなかいないがな。
「ん~、これと言ってお前にやって欲しいものはないな。
国からの命令で暗殺の件が一つあったが、アイナが先週こなしたし……」
おっちゃんは依頼の用紙を貼り付けるコルク板を見ながら言った。
板は大きく、店の東側の壁にかけてある。
「アイナさん、相変わらずそっち系の依頼しかこなしてないのか?」
そっち系とは言うまでもなく暗殺、殺しといった暗いイメージのあるものたちだ。
ギルド所属のアンダーテイカーは、“仕事を請け負う人”という意味合いの他に“処刑人”という意味合いも含まれている。
「いやいやぁ、その前は普通のものをやってたし、数の増えた小型モンスターを狩りに行ったりもしてたぞ。
今日なんかジュダスの森にペオドパの実取りに行ったしな」
「珍しいこともあるもんだ」
「まあな」
やっと出てきたビールを一気にあおる。
アイナさんがねぇ、森に実を取りに行くとか……あ?
と、そこで何気なく見つめていた依頼板にあった小さな紙に視線が留まる。
「何あの小さい紙。専用の紙じゃねえじゃん」
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