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俺はその紙をコルク板から取って裏表を確認した。
どう見てもただの紙。依頼用紙ではない。
「あー?ああ、これな」
「なんだよ」
おっちゃんは俺から紙を奪って内容に目を通した。
「いやいや、お前にこなして欲しい程のものじゃないぞ?」
「どんな依頼だよ」
おっちゃんは眉間にしわを寄せて言った。
「バレルのばあさんの依頼だよ。頭の……ちょっとな、ヤバいあのばあさんだよ。しかも小遣い程度しか報酬ないぞ」
「いいから言えって」
「そこまで言うなら、読むぞー。
『昨日のお昼を少し回ったくらいかしらねぇ。自分の畑を見に行く途中で変なものを見たの。ひどく荒い息をしながら走って来たわ。黒い影が。
その影が私にぶつかってきたのよ。絶対に危害を加えようとしてきたに違いないわ。
森の方に走って行ったから退治してちょうだい。万が一私の畑が荒らされたりでもしたら大変だわ。
報酬は、これくらいが妥当よね。それじゃあ、終わったら言ってちょうだい』だとよ」
「……なんじゃそれ」
「わかんねーって。
ばあさんに危害加えなかったやつが畑を荒らすかっつーの。一応紙は貼ってみたものの、正規の紙じゃない分ギルドの連中も怪しんで引受けやしねえ。しかもバレルのばあさんが依頼主なら尚更だよ」
ふーむ。俺はしばらく顎に手をあてて考える。
名前の出てきたばあさんはこの街ではちょいと有名だ。おっちゃんの言ったように、どこにでも一人は必ずいる頭のおかしい部類の人間なんだ。
確かに――普通なら避けてしまう感じだが、俺は少し引っかかる部分があった。
だから今それを考えているのだ。
俺は自分自身何に引っかかってる?
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