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次に向かったのはもちろんアモールの店。ショウウィンドウに飾られた服の趣味がまたまた一変していた。
うわー……、しょうこりもなく。
こんな失礼な事を考えつつドアを開けると取り付けられた鈴が鳴り、中から巨漢のアモールが出迎えてくれた。
「あら、ロイ坊じゃない」
相変わらず化粧の濃厚な顔面でございまする。
「こないだ注文しといたやつもう出来たか?」
「出来てるわけないじゃない。素材の事、私自身よくわかってないんだし。それに来るのも早い。そんなに急ぐ事だったの?」
「うんにゃ、そういうわけでもねえよ。ただ進み具合がどうなのかなぁ、と」
うーん、アモールでもベルアモンドの取扱いに悩むのか。
現存数が少なく、見たことも聞いたこともないから仕方が無い。俺自身知らない事だったしな。
アモールに託したベルアモンドはアエシュマの残骸のもの。欲に目の眩んだバカが何か言ってこないうちに俺が回収してやった。
あのまま放置しておくと所有権やら何やらで大変な事になっただろうからな。ティアマトに対する術として俺が持って帰って預かるから、と言うと戦場にいた兵士達は快く俺の提案を受け入れてくれた。
逆らうヤツなんざいねえか。
俺がベルアモンドを回収した理由は二つ。
一つは俺の防具を一から作り直すため。もう一つは、カエルラの武器のためだ。
「ロイ坊の頼みだから一応最優先でやろうとはしてるけどね。もうちょっとかかるから我慢してちょうだい。
重さや形状、頑丈さ、機能性……仕事は完璧にこなしたいのよ。前より優秀な防具となると尚更考える時間が欲しいわ」
いい仲間を持ったもんだ。
「あァ、信用してるぜ、アモール」
心から感謝の気持ちを込めアモールに頭を下げると、アモールはいきなり俺を抱き締め殺そうとしてきた!
「んもー!超可愛いんだから!お姉さんが何とかしてあげるから、ね?」
ううううん?お姉さん!?
無理……ギブ……死ぬ。
ぐったりとなっているのにも関わらず顎をスリスリと顔面にこすりつけてくる。
こいつの筋力、ハンパねえわ……。俺の筋力と同等かそれ以上だもんな。
その呪縛から解放されたのは新しい客が店を訪れた時だった。
――陽が沈む少し前の時間であった。
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