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場所は変わって目的の森の手前。そこに俺は突っ立っていた。
「確かこのあたりで見かけたんだっけか……っつーか、ここって」
ぷくのいる森じゃん。
特にこれといって凶悪モンスターが生息している、というわけでもない、説明のしようのないくらい普通の森である。
そして、ばあさんが影に出くわした場所から振り返りガルシアの方を向いた時やっと俺の中にあったモヤモヤが何なのかがわかった。
「この位置……」
そう、まさにこの位置はガルシアのあの大きな門から丸見え。門には常に四人以上の見張りがついている。
門の上の兵士はモンスターの侵入を防ぐためにいち早く異変を発見するのに長けているはず。
なのにばあさんが接触した時、何も見ていなかっただと?
やはりばあさんの戯言?そうでなければ――
俺はそれなりに警戒して、森の中に足を踏み入れた。
ここの森は結構人の通りがあるので草木が踏みしめられ、ちょっとした道が出来あがっている。
ま、今日はそんなところは歩かない……と思いきや堂々と歩く。
別にこそこそする必要がないからだ。
わざわざこっちが探すのよりも、その影とやらに見つけてもらったほうが早いだろうし俺が楽。
「『バゲージ』」
襲われた時のために剣を出しておいた。
鍔のその見事な装飾、黒い刀身に幾つかの呪符のついた、左右対称の完璧な形状。
昔にじじいからもらった切れ味抜群の名剣“アロンダイト”。
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