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あんま使った事ねえけど、魔剣の部類に入るもので値段など付けようがないほどの価値がある。
俺がこいつを使わなかったのは魔力を常時吸い取ってくるのと異様なまでの軽さが気に食わなかったから。
微々たる量でも使用中に魔力が減るのはゴメンだし、何よりも重量の無いものってのは持っていても持っている感じがしないのだ。それが売りなんだろうけど、俺には合わない。
先ほどから変わらぬ歩みで進んでいるが、一向にその影とやらの気配すら感じられない。
あんのババア……無駄な心配かけさせやがって。
ここまで来たのを無意味にしたくなかった俺は、
「ついでだし、ぷくに会ってみるか」
そう独り言をつぶやいてまたもや奥へ奥へと進んでいく。
陽も完全に沈み。
いよいよ先の方が見えなくなってきた頃、森に起きた微かな変化を俺は感じとった。
森というよりかは俺の周りのその空気が変った。
俺の進行方向の右斜め前あたりからの視線。人間のようにネチっとしたものではない。
鍛練で気配を消した、とかでもなさそうだ。言わば野生的な視線。
相手は少しずつ移動している。
噂の影ってやつか?
まだ襲っては来ないようだ。ただ見ているだけ。
かといって俺は緊張した雰囲気を纏わせるわけでもなくひたすらぷくの元へ歩いている。
お前の視線にゃ気付いていませんよ、と装ってるのだ。
視線が動いた。
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