感情表現が苦手な嘘つきでありまして、

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「…ねぇ、良太郎」 「……なに?ウラ」 一房だけ青い色をもつ幼なじみに目を向ける。 あぁやだなぁと目線を写しながらぼんやり思う。 何故だか、自分は彼に嫌われているのだ。 たしかにいつもありえないほどの不運に巻き込んでいるのだから嫌われるのも当然なのかもしれない。 でも、どれだけ気をつけても不運なのはとめられないんだからしかたないんだよと言い訳をしてみる。 僕だって巻き込みたくて巻き込んでいるわけじゃないんだから 嫌いなら近寄らなきゃいいのに何故近寄ってくるのだろうか。 …いや、家が隣なんだからしかたないのかもしれないけど! それにウラは姉さんのコーヒーが好きだから来たくなくても来ちゃうのかもしれないけど! いつもなら姉さんに任せるんだけど…今は買い出しにいってるからここには僕しかいなくて、 ほら、また眉を寄せて不機嫌そうな顔をしている。 いつも女の子達と一緒にいるときは綺麗に笑って優しそうに目を細めているのに。 何故こんな嫌だと態度に出しちゃうほど嫌いな相手を構うんだろう。 はぁとこっそりため息をつく。 ほんとにほっといてほしい。 「…何?その匂い、」 「匂い?」 ウラにだしたコーヒーのことかなと思ったけど、どうやら違うみたいで、 いつの間にか近づいて不機嫌そのものの顔でこちらの髪の匂いをかぐウラに合わせて自分もくんと匂いをかぐ。 そしてぼんやり思う。 あぁそっか 「侑斗のシャンプーの匂いかも」 「…」 「昨日、シャンプーなくなっちゃって、まぁシャンプーはさっき買ってきたんだけどね。 困ってたら…ちょうど従兄弟の侑斗とデネ兄が一緒に泊まりにきてて、」 借りたんだ、けっこういい匂いだよねこれ…それにしてもウラって鼻よかったんだ、と笑おうとしてなにか冷たいものが伝う感触に首を傾げる。 ? ぽたり、ぽたりと落ちる水音。 「…あぁごめん、良太郎手が滑っちゃったみたいだ」
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