(何もしらないくせに)

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『なんでさっさと殺さないわけ?』 うるさい 『ほら、さっさと殺せよ』 うるさいうるさい 『お前あいつ、えっと野上良太郎だっけ?に情でも移ったワケ?』 うるさい!!!黙ってよ! 『黙っていう事聞いてほしいのはこっちのほうって気がするんだけど』 うるさいうるさいうるさい!!!! 頭の中で終わりの見えない言葉のやり取りを繰り返す。 前まではどうってことなかったのに今はとっても耳障りでしかたない。 いっつもいっつも頭に響く『声』は同じ問いを繰り返す。 それが嫌でしかたがなくってその声を押し潰すようにお気に入りの曲の音量を大きくして流す。 (たしか昼間にモモタロスがうっせーって言ってた気がしたけどそんな事は知らない) 最初は踊ってたけどつまんなくなって途中で踊るのをやめて絵を描く。 最近強くなろうって色々頑張ってるりょーたろーの絵。(りょーたろーすっごく頑張ってるけどあんまり強くなってないから最近落ち込んでるんだよね) なんとなくうまくかけたらりょーたろーにあげよーって思う。 きっとまた弱そうな優しい顔で笑ってくれる。りょーたろーだし。 なんだかイライラしているのが落ち着いてきて楽しい。 クレヨンをにぎる。 完成までもう少しだって時にまた『何やってんだよ殺せって俺言わなかったっけ?』という声が頭に響いた。 またいらいらしてきて、だん!!!って大きい音を出し机を叩く。 クレヨンが折れた。 絵の中の良太郎がグニャって歪む。 なんだか心臓が苦しくてボクの顔も絵の良太郎と同じぐらい歪んでいく。 『野上良太郎を倒せよ壊せよそれみたいに簡単だろ』 頭の中で声が鳴り響く。 もう聞きたくなくて歪んだ良太郎の絵を持ったまま体を縮めた。 頭がズキズキする。耳を塞ぐ。いつの間にかあの声が聞こえなくなってる事に気付いて手を離す。 「ス…リュウタロス?」 耳にあてていた震えた手を外すとどこか情けなくてそして優しい声が頭に響いた。 …良太郎の声だ。
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