―Prologue―

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「この服ちょーかわいい!」 「ねーっ!誰が買う!?」 「私よっ!」 「いや、あたしでしょ!?」 「ほらほら、喧嘩しないのー」 快晴の今日は日曜日。 静岡県にあるアウトレットショッピングモールに、一人の母親と、三人の少女が来ていた。 その会話のさなかの、喧嘩になりかけの状態をなだめた少女の名は、雨宮里香(あまみやりか) 高校二年生だ。 住んでいる場所は静岡であるので、高校は公立。将来的には上京して立派な大学に入ろうと、受験勉強を頑張っている真っ最中の少女なのだ。 そんな勉強が毎日の今に少しばかりの休息をと、里香の母親の運転で、友達二人と郊外のアウトレットショッピングモールに来ていたのだった。 「そろそろお昼にしない?」 「早くない!?」 「お腹空いちゃったよー」 「私は良いよ?」 「里香は優しいねぇ」 「うちは優しくないってか!?」 「はいはい喧嘩はやめましょーね」 今では滅多に遊ぶ機会のない里香にとって、この休日はとても楽しい時だった。 里香はみんなから慕われていた。 その優しさと、空気に流されず、空気をしっかり読むその賢さは、誰もが羨むものがあった。
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