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声のトーンが落ちていく。
夕焼け空が、嫌な位、輝いて見えた。
「うそ…だ。」
「嘘じゃねェ…」
立ち上がったまま、目は空中をさまよっていた。
何も、何も見れなかった。
夕焼け空も、さっきまで笑っていた姉上が、曲がっていった門も、銀八も、ソファもテーブルもカップも壁も天井も、。
見えていたのは、頭ん中に広がった、姉上の笑顔だけだった。
その後の記憶は、曖昧だった。
姉上は残りわずかな命なんだと言われた。
子供には酷だからと、親もいない俺の代わりに、先生が聞かされたのだという。
呆然として、聞いてんだか聞いてないんだか分からなくて、それでも姉ちゃんには内緒にしておけ、と。
残りわずかな命、思う存分、過ごさせてやれと。
先生は、言った。
皆には言っておくと。
アイツらなら大丈夫だと。
俺の生徒だからと。
その日は一人で帰った。
神楽には俺から伝えておくと、先生が言った。
ごめんなチャイナ、今日は一緒に帰れそうにねェや。
「おかえりそうちゃん、遅かったじゃないの」
帰ったら、元気な姉上がいた。
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