愛したいと心は言っていた

18/33

101人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
前を歩きフェンス手前で止まったチャイナが、俯くのが見えた。 「見くびるのも…大概にしろヨ…」 呟かれた言葉は…、震えていた。 「お前の事心配だから…ほっとくなんて、そんなの出来る訳ないヨ…」 ごしごしと、目元を擦る姿。 そんなに擦ったら、赤く腫れちまう。 「チャイナ…」 チャイナの元へ歩き出そうとした瞬間、先にチャイナが振り向いた。 案の定、目元が真っ赤に腫れていた。 そして…それ以前に、涙がボロボロと頬を滑り落ちていた。 「見くびるなヨ!!お前の事なんてお見通しアル!!何でも分かるネ!!分かる、わかるアル!…お前が元気ないのも、何かで悩んでんのも、ぜんぶ…ぜんぶ…アル」 一歩、近付いた。 また、一歩、近付いた。 こんなにも心配かけていた自分が、悔しく思えた。 「すき、だから…っ好きだから、何でもお見通しアル!!!」 くしゃりと歪んだ顔のソイツを、力いっぱい、抱きしめた。 「不器用なんだよ、バカ」 「…!」 「ごめん。」 ごめんな。 心配かけちまって。 こんなに泣かせちまって。 俺のせいで。 「分かれば、ヨロシ」 押し付けた肩から、か細く掠れた声で笑う、愛しい恋人がいた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加