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「そのままで、聞いてくれるか?」
「……最初からそう言えヨ、しょうがない、聞いてやるネ」
素直じゃない恋人に、微かに笑った。
見上げた空は、青かった。
そよ吹く風は、心地よかった。
耳には皆の笑い声が、いつまでも聞こえていた。
「姉上はね、もう長くないんでィ」
「……」
「それを聞かされた時、胸に穴が空いた感じがしたんですぜ、あんなの初めてでさァ。」
胸にぽっかりと、穴が空いた。
スカスカになった穴には、代わりに、悲しみやら苦しみやら寂しさやら、そんなものが詰め込まれて。
今までずっと、誰にもあかさずに蓋をしていた。
「でもやっぱ、俺には重くて、お前に八つ当たりしちまって、ダメだなァ俺ァ…ダメな男ですぜ…」
「ダメなんかじゃないヨ」
きゅっと強く回された腕。
「私だって、辛いアル。苦しいアル。それをお前はずっと隠して、そんなもん一人で抱え込むなんて無理ネ…恋人も少しは頼れヨ。私はいつでも、お前の見方アルヨ。」
くぐもった、優しい言葉が耳に響いて心地いい。
いつでもお前の見方。
言われた言葉に、救われた気がした。
「ありがとう、ありがとうな、チャイナ。」
「こういう時は名前で呼ぶもんアルヨ、ドS。」
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