愛したいと心は言っていた

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“今日が、峠でしょう” ベッドに横たわった姉上は、ウエディングドレスを着た、あの時のように、真っ白だった。 頬から段々と赤みが消えていく。 「あねうえェ…」 手を伸ばした…。 頬に触れた…。 姉上の瞼が微かに動き、薄く見開いた姉上の前には、俺と、周りを囲むように、クラスメートの姿があった。 「みんな…」 弱々しい、か細く響く姉上の声は、それでもはっきりと耳に届いた。 「ごめんね…、わたし、もうもちそうに、ないんですって。」 手を強く握る土方は、うん、うん、と何度も頷いていた。 …もう、もちそうにないんですって。 みんなともっといたかったけど、無理そうなの。 ごめんね、 ごめんね ごめんね ごめんなさい 助けられなくて、ごめんなさい。 「泣かないで…ねェ、そうちゃん、神楽ちゃんを、幸せにするのよ。」 伸びた姉上の手は、俺の手と神楽の手を掴み、二人の手を繋いだ。
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