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「なるほど。
あれが“囚われの揚羽蝶”
ですか……」
アゲハが立ち去った後でも、
ずっと無表情の嵯霧。
「君はそんなこと、
誰に聞いたのかな…?」
「我が“主”が
言ってましたよ」
美月は先程の顔つきとは違って、
厳しい顔つきになる。
鋭い目つきで、
嵯霧を睨んでいた。
それでも、
嵯霧は全く動じない。
「アゲハは、
囚われてなんかいないさ。
むしろ囚われてるのは、
私の方だよ」
「……情けないですね。
貴方という人が、
あんなたった一人の
“従”に夢中になるなんて」
一瞬、
鋭い風が走ったかと思う。
バシュッ
目を、見開いた。
嵯霧の頬から、
ポタポタ、と血が流れた。
だがまた、
顔を無表情に戻し。
指で血を拭う。
「ホントに情けない。
“溺愛”なんて、
禁断と同じですよ……」
美月の表情は、
怒りに、満ちていた。
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