第1章‐揚羽蝶は微笑む‐

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  「なるほど。 あれが“囚われの揚羽蝶” ですか……」 アゲハが立ち去った後でも、 ずっと無表情の嵯霧。 「君はそんなこと、 誰に聞いたのかな…?」 「我が“主”が 言ってましたよ」 美月は先程の顔つきとは違って、 厳しい顔つきになる。 鋭い目つきで、 嵯霧を睨んでいた。 それでも、 嵯霧は全く動じない。 「アゲハは、 囚われてなんかいないさ。 むしろ囚われてるのは、 私の方だよ」 「……情けないですね。 貴方という人が、 あんなたった一人の “従”に夢中になるなんて」 一瞬、 鋭い風が走ったかと思う。 バシュッ 目を、見開いた。 嵯霧の頬から、 ポタポタ、と血が流れた。 だがまた、 顔を無表情に戻し。 指で血を拭う。 「ホントに情けない。 “溺愛”なんて、 禁断と同じですよ……」 美月の表情は、 怒りに、満ちていた。 .
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