◇始まりの旋律

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  美しい美しい、旋律。 だけども、切ない。 それは誰の為に、 奏でるのだろうか。 「アゲハ」 懐かしい声がした。 後ろに振り返れば。 「……菜月様?」 そこには、 美月の兄、菜月がいた。 久しぶりに見掛け、 少しばかりに驚いたが、 姿は変わっていなかった。 「久しぶりだねー。 美月の“従”は、 窮屈じゃないかい?」 「いえ、そんなことは。 逆に心地良いものです」 「そっかー」 そう言い、優しく微笑むのは 美月と似ていて、 綺麗だった。 「あ、そういえば。 俺の“従”を見なかった?」 「えっ、菜月様、 いつの間に、“従”を…?」 「あれ?聞いてなかった? 俺、つい最近、“従”を 見つけたんだよ」 今まで、 “従”をつけなかった彼が そんなことを言うなんて、 驚いた。 全く興味を示さなかったのに。 ではそれほど、 気にいった者だろうか。 と、アゲハは思った。 ならば自分も、 どんな人だろうかと 少しばかりに 興味を持った。 .
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