◇始まりの旋律

5/11
前へ
/32ページ
次へ
  そして彼は、 またピアノを弾く。 聞いたことのない、曲。 だけども、切ない。 「………っ」 彼は、何を思って 弾いてるのかと 思った。 誰かへの、思い…? アゲハは目を閉じて、 ただ黙って、聞いていた。 ピタッ、と音色が止まった。 「………願い」 嵯霧は 呟くように言った。 アゲハは目を開けて、 嵯霧に視線を向けた。 嵯霧は鍵盤を撫でる。 「願いは、何の為にあるのか。 叶えるだけのものなのか、 幸せになるだけのものなのか」 「……………」 嵯霧が一体、 何を言いたいのか、 わからなかった。 「本当は、それはわからない。 だから人それぞれ。 だけど……」 嵯霧は こちらを見てきて。 目が、合う。 「己の願いが誰かと一緒ならば、 何かを“犠牲”にしなきゃ ならないんだよ」 「……、…っ?」 その瞬間。 頭の中で、 何かの映像が流れた。 意味が、わからなくて。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加