◇始まりの旋律

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  ガチャッ 「あっ、 此処にいたのか、嵯霧」 「………菜月様」 そこに現れたのは、菜月。 嵯霧はまだ、 誰にも見せたことのない 笑顔を見せた。 「……ピアノ、か」 菜月は微笑んだ。 嵯霧の元へ近づき、 腰に腕を回した。 「ピアノ、弾けますか?」 「少し…だけな」 菜月は片手で、弾く。 その曲に、 嵯霧は目を見開いた。 声が、震えた。 「この曲……」 「懐かしいか?」 「何故……」 「何故でしょう?」 フッ、と笑い、 グイッと腰を寄せた。 「……私の“主”は、 貴方だけですから……」 「………わかってるよ」 己のそれを、 嵯霧の唇に重ねた。 嵯霧の頬には、 温かな涙が流れていた―――。 .
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