第1章‐揚羽蝶は微笑む‐

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  「っ!?」 突然と、 顎を掴まれた。 間近に、静の顔はあった。 静は…“黒い男”と言う。 漆黒の髪に、 漆黒の瞳に、 服はいつも、黒い。 だけどその容姿は、 悔しいほどに 綺麗な、男なのだ。 「しばらく会わないうちに、 また色気が増したな」 「……………」 アゲハは、 静を睨み上げる。 そんなアゲハに、 静は苦笑する。 「そんなに睨むなって。 せっかくの美人の顔が、 台なしだぜ?」 「お前に褒められても、 全く嬉しくない」 アゲハは、 静の腕を振り払う。 そして静かに、立ち上がった。 「お前はさっさと帰れ」 「えー。 昔みたいに、抱かせて くれないの…?」 「っ。自惚れるなっ! あれは、事故だっ」 「事故、ねぇ……」 意味深のような言葉を放つ。 アゲハは、 拳をにぎりしめる。 「……ねぇ、抱かせてよ」 アゲハの耳元で、 甘く、囁く。 アゲハはグイッ、と 静の顎を掴む。 「今宵だけ、許してやる。 ……だが、俺を 蛹から蝶に変えてみせろ」 その、アゲハの瞳に。 静は、吸い込まれそう。 「……上等…?」 妖しく、笑う。 .
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