第一話:双頭の蜘蛛と失われた記憶

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翼がどれだけ落ち込んでいても、周りの騒がしさはいつもと変わりない。 雅人が意識不明だということを知ってるいるのは、ほんの僅かなのだ。 「あっ、おはようございます」 翼は自分に向かってくる圭介へと、小さく頭を下げて挨拶をした。 翼の曇った表情を見て、歩いて来る圭介は僅かに顔を俯けた。 「大神君は、まだ……」 翼は何も言わず小さく頷き、圭介は小さく溜息を吐いた。 「舞さんも帰って来ていません。雅人さんにつきっきりで三週間になります……」 「ツキさんは?」 「消えたまま……雅人さんが倒れてから、ずっとです」 被害者は雅人だけではなかった。 雅人が倒れてからしばらくしてツキの姿が全く見えなくなり、同時に龍一とキュラミスも消えた。 あの二人は【組織】を脱退しているため、どこかへ消えたということは予想がつくが、問題はツキだった。 舞と翼の見解では、雅人が意識を失ったことでツキへ『気』の供給が出来なくなったというものだが確証がない。
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