第一話:双頭の蜘蛛と失われた記憶

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「ずっとここに?」 「近くにホテルがあるからそこに泊まってる。気が付いたらここで寝てる……なんてこともあるけど」 舞は力無く笑みを浮かべたが、その顔には疲労の色が窺える。 体を壊してしまうのは時間の問題だと分かっていても、雅人を心配する舞の姿を見れば何も言うことが出来ない。 「【本部】と連絡は取れたの?」 「いえ……圭介さんと恵美理さんも頑張ってはいるんですが、まだ繋がってません。正昭さんも勇馬さんも音信不通状態で……」 「パパと連絡が取れないのは分かるけど、【本部】自体に連絡が取れないのは変ね……」 「【組織】の動きと関係があるんでしょうか?」 「こんな時にツッキーがいてくれれば……」 アドバイスをしてくれる月読尊の守護精霊は、ここにはいない。 ただ無情に、時間が流れるだけだった。
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