序章~天から降る~

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後は飛び込むだけ・・・ 頭の中がうつろだったのが、ここで今命を断つという瞬間に突然、意識が明確になった。 突然息が止まりそうな息苦しさを覚えた。 母親の顔が、目の前に大きく浮かんだのだ。 優しい笑顔を描いた途端、涙が止まらなくなった。 私を心から愛してくれた。 そして今も変わらず愛してくれている。 いつも心からの笑顔で私を見つめてくれていた。 「あぁ・・」 友理奈は声にならない声でむせび泣いた。 私がいなくなったらどれだけ悲しむだろうか。 自分を責めてしまうかもしれない。 ごめんなさい・・ そんなことできない・・ 母を裏切るようなことは絶対にできない。 絶対に・・・ また咳き込むように泣き始めた。 そして体全体の力が抜け、ゆっくりとずりおちるように座りこんだ。 一つの答えは、生きていかなきゃならないってこと。 それは今の友理奈にとって絶望的なことだった。 死ぬことさえ許されない。 友理奈の白く綺麗な肌に、服に、コンクリート色の壁粉がついていた。 その粉を落とすこともなく、すっと立ち上がった友理奈はもう下を見ることはかった。
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