序章~天から降る~

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友理奈と剛史が出会ってからもうちょうど10年。 高校生の頃の友理奈は勉強や運動ができるとか、ものすごく美人というより、笑顔の魅力的でチャーミングな女性だった。 一方の剛史は、勉強嫌いで野球浸けの毎日を送る男子。 剛史は野球部で部活が終わって教室に戻ると、ベランダから大きな声で校庭にいる友達と話す友理奈がいた。 友理奈はベランダから戻ると教室に剛史がいるので驚いた。 「練習終わったの?いつも大変だね」 「おう、なんとかね、そっちは何してんの?」 「一応、明日の宿題やってた。家まで持って帰っちゃうとやらないから」 「確かに、俺もそう。ところでお前、何駅だっけ?」 「浦和だけど」 「俺は蕨だから途中まで帰ろうぜ」 「いいよ」 小さい唇の口角を大きく上げて笑う笑顔に、剛史はどきっとした。 この日、二人は初めて一緒に帰ることになった。 長い年月が経てば、初めての出来事ばかりだったことも慣れて何も感じなくなる。 そんなこと付き合う当初は思いもしなかったけど。
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