最初の別れ

4/8
前へ
/135ページ
次へ
一郎太の口は、俺が詰めたお菓子でいっぱいだった。 「うぐっ、もぐもぐ…」 俺は溜め息をついた。何でこいつを助けなくちゃいけないんだ。 「おちついた?」 先生はポケットからティッシュを取り出し、一郎太の涙を拭いていた。 「ぐすんっ、うん。ありがとう」 「きにすんなよ!じゃあ、俺はかるから、じゃあーなー!」 俺は後ろ向きに走った。手がちぎれんばかり振った。 「バイバーい!!またあしたなー!」 「またねー、策くーん!」 俺は二人の挨拶を受けながら門に走った… 門のすぐ横に、黒いベンツがあった。あれは俺ん家のだ。たしか、あの車はオークションで買ったとか… まぁ、そんなのどうでもいい。早くお袋に会いたかった。 「かぁーさーん!!」 俺は腹の底から声を出した。犬を連れて歩いていた人が、ビックリして俺を見てた。 お袋は窓から顔を出し、ニコッと笑っていた。 「策ぅー、あまり五月蝿くしないのー!お尻叩いちゃうわよー?」 お袋の尻叩きは、親父でも泣く程だ。 俺は死にたくないので、そそくさと車に走り寄った。 お袋がドアを開けてくれた。 それと同時に車の中にダイブした。 こうやって、毎日帰る。 家は、幼稚園から10分くらいだ。 しかし、その日は道が違った。 そして、家ではなくデパートに入っていった。
/135ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加