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デパートの立体駐車場には入ったが、デパート本体には入らない。
お袋は、さっきまでの笑顔はいなかった。しかもその場の空気は張り詰めていた。
そんな空気を破ったのは、お袋だった。
「さ…く?今いる幼稚園…好き?」
何言ってんだい、あんた。当たり前だろ?
俺は、笑いながらいった。
「うん!佳衣ちゃんとか、一郎太、先生がいるもん!なんでそんなこときくの?」
お袋は、決意したのだろう。明るい顔をして言い放った。
「あのね、策。お父さんの転勤が決まっちゃった!だから、こことさよならしないと…いけないの!」
テンキン…?
な、んでだよ!!
さよなら?ふざけんな!
俺の頭は、混乱していた。
「佳衣ちゃんと…一郎太や先生とあえなくなるの?いやだ!…じぇたいいやだ!おれはのこる!ここに、のこって!…」
言い終わる前に、頬を平手で叩かれた…パチンっという音が響いた。
「お母さんだって、お母さんだって辛いの!確かにここを離れたくないわよ?でも、仕方ないの!」
母さんの目は赤くなり、涙が零れてる。
俺は、迷った。
目の前には泣いてる母、頭には笑ってる佳衣ちゃん。
結局、家庭が優先されるんだよ…
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