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光が見えた。
何の光なんやろ。気になるなー。よし、光の先に行ってみよ。ボクは飛んだ。
「オギャー!!」
分娩室に、ボクの産声が鳴り響いた。何でか知らんけど、泣いた。
「お母さん、よう頑張りはったな。元気な男の子ですよ」
ボクのことを抱き抱えながら、歩く女の人の顔がぼんやりと見える。
ボクは別の女の人に抱き抱えられた。この女の人の方が、さっきの人より、好きやと本能でわかった。
女の人は、汗だくの顔をしながら、ボクを覗き込んでいる。ボクはちょっと恥ずかしくなったから、笑った。
女の人も笑った。綺麗な人やなって思た。
「お母さん、この子のへその緒切りますんで、ちょっとだけ、待ってて下さいね」
とさっきの女の人が言って、ボクは「お母さん」と呼ばれた女の人から、離された。
ボクは、キランと光るもんを見た。次の瞬間、じゃきんという音が聞こえた。ボクのへその緒とかいうもんを切られた音やて、すぐにはわからんかった。痛くはなかったけど、泣いた。
ボクはへその緒を切った女の人に、また抱き抱えられて、「お母さん」と呼ばれた女の人がいるところに、戻された。
ボクは、何か疲れてきた。光を見つける前の方がよかったような気がして、また泣いた。
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