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打ち止めは街にいた。同居人の芳川桔梗からちょっとした用事を頼まれた為である。用事そのものはすぐに済んだのだが、やはり子供らしく寄り道していた。
「あー、あの服可愛いー、ってミサカはミサカは誰にともなくミサカのセンスをアピールしてみたり」
ウインドウショッピングをしつつ大通りを進む。しばらくして、楽しそうだったその足が止まった。
「あの人と一緒ならもっと楽しいのかな?ってミサカはミサカはあの人に思いをはせてみる」
打ち止めは十月九日に再会し、すぐに行方不明になった一方通行を想う。
彼にも事情があるのだろうと、頭では理解していても感情は納得しない。強くて弱い彼にもう傷ついてほしくないと思う。
この想いの正体が何なのか、打ち止めはよく解っていない。感情を知識としてしか持たずに生まれ、道具として生きることを強いられた妹達は、人間を好きと嫌いに分けることさえ最近やっと覚えたばかりだ。
『好き』の種類ならなおのこと解るはずがない。
ただ、打ち止めの『一番の人』は間違い無く一方通行であった。
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