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「分かりやす!
ほんっとに弘康って嘘つくの下手だよな」
勝紀はケラケラと声を出して笑いながら、俺の首に腕を回して無理矢理顔を近付けた。
勝紀の控え目な香水の匂いが鼻をつく。
「今日、午後からいつもの場所で待ってるからな?
ちゃんと告れよ?
ちゃんと報告に来いよ? 解ったな?
……よっしゃ! 行ってこいっ!」
勝紀はそう言うと、俺の背中を思いっ切り叩いた。
気が付くと五組の教室の真ん前に着いていた。勝紀はそれ以上何も言わず、隣りの自分のクラスである四組の教室に入っていった。
俺もヒリヒリと痛む背中を擦りながら、教室へと入った。
俺が五組の教室に入ってから数十分。
時々彼女を横目で気にしながら友達と喋っていると、担任が教室に入ってきた。
すぐに全員が席に着き、担任の方を見た。
担任の話しの間、勝紀の言葉が頭の中に媚びり付いて離れない。
「ちゃんと告れよ?」
何時になく真剣な表情で勝紀はそう言っていた。
それもそのはず。
俺は小中と好きな人ができる度に、勝紀に相談していた。
しかしそのどれもが、『告白』という一歩を踏み出せずに終わっている。
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