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「樋口!?……樋口弘康!」
俺は自分の名前を呼ばれていることが漸く分かった。
卒業証書を持っている担任が目に入った。
俺は急いで立ち上がって、教卓に向かって歩き出そうとするが……。
「すいませっ……うわぁ!」
自分の鞄の手提げ部分に足を取られた俺は、体勢を崩して盛大に倒れた。
「おいおい。大丈夫か?」
担任の心配そうな声と共に、クラス全体が大笑いした。
一番ショックだったのは、この光景を彼女にも見られたことだ。
俺は恥ずかしくて、小走りに卒業証書を取りにいって席に着いた。
そんな事件(?)があったにもかかわらず、俺の頭の中はずっと勝紀の言葉が飛び交っている。
最後のHRが終わり、担任が退出した。
教室中からカメラのシャッター音が聞こえる。俺も友達に誘われて、かなりの枚数の写真に映った
そんな時、俺の携帯にメールが届いた。
『今からメールでも良いから待ち合わせしろ!
当たって砕けろ!って砕けちゃダメかぁ(笑)』
そんな勝紀からの簡潔なメール。
まさかこんなメールで決意するとは、今まで夢にも思わなかった。
だけど、俺は彼女にメールを送った。
『三葉公園の桜の木の下に一人で来て下さい』
絵文字も何もない地味な俺らしいバレバレなメール。
俺の心にもっと余裕があれば、これよりはずっと増しなメールが送れたのかもしれない。
少なくとも、今の俺にそんな余裕は無かった。
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