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シャッター音の嵐が止んだ後、俺は一人で三葉公園に向かった。
「来るはずがない」
桜の木の下で待つ俺には、そんなネガティブな考えを口に出した。
「どうせ、今ごろ彼氏とどっか行ってるんだろうな」
いるかどうか定かではない彼氏と、その傍らにいる笑顔の彼女を想像して、俺の心は落胆し、溜め息を吐いた。
午後二時。父さんからのプレゼントの腕時計が、その時間を指していた。
俺が公園に着いてから一時間が経過している。
さすがに腹が減った。
朝から何も食べてない。
「どうせ……もう来ないか」
そう勝手に解釈して、俺は中身の殆ど入っていない軽い鞄を持ち上げた。
今まで軽かったはずの鞄が、今はすごく重く感じた。
「はぁ……」
俺はもう一度小さく溜め息を吐いて、肩を落とし立ち去ろうとした。
その時、黒い一つの人影が目に飛び込んで来た。
その人影は俺に気付くと、ゆっくりと近付いてくる。
そして、目の前で止まった。
「あの――……何かよう?」
少し顔が赤い。
当たり前だが、彼女も何故呼ばれたのか勘付いているらしい。
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