門出

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有り得ない……。 目の前に、彼女がいる。 夢か? 幻か? まさか……ドッキリとか? ドッキリだったら仕掛けた奴をブッ殺す! 俺の心臓は爆音を鳴らし、手足は震え始めた。 唇は乾き、喉も全く潤いが感じられない。 「あの……」 俺は震える声で彼女に呼び掛けた。 彼女は俺の方に目を向けた。 彼女の瞳を見て、さらに心臓が荒れ狂う。手には有り得ない程の汗を握っている。 やばい。声が出ない。 「そっ……その――」 緊張のあまり、視線を彼女から逸らして、一言だけ言った。 「つ……付き合って……下……さい」 消え入りそうな声で呟いて、俺はその言葉を心の中で自分を叱責した。 『なんだそれ!? もっと言葉があんだろ? しっかりしろよ俺』 心の中でそう叫んだが、それ以上の言葉が出てこない。 横目で彼女を見ると、今まさに返事をしようと口を開き始めている。 ダメだ! ここで返事をされたら、俺のちゃんとした気持ちが! ちゃんとした告白ができなくなる。 「あの……」 今まさに彼女が口を開き、俺の告白紛いの臆病な言葉に返事をしようとする。
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