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あの人生初の怒濤の告白劇(?)を終え、彼女と別れてから数分後。
俺は勝紀の待つ場所にはまだ向かわず、桜の木を眺めていた。
終わって欲しくない時間が過ぎ、新しい門出を祝福するように桜の木は静かに揺れ、花びらを落とす。
伝えられたのだろうか?
伝わったのだろうか?
というか、アホみたいな台詞を言ってしまった気がする。
一か月後、一年間通った教室には新しい三年生が集まるのだろう。
俺があの人と仲良くなろうと必死になった教室で、新しい恋が生まれるだろうか。
少なくともあの教室に、一年間というとても短い時間の中で、有り得ない程素晴らしく、掛け替えのない想い出が新しい教室の住人達によってまた詰め込まれるのだろう。
嗚呼。
俺の一年間の片思いは漸く幕を閉じた。
何がなんだかよく覚えていない。
思い出そうとすれば、思い出せるのだろうか?
だけど、興奮し過ぎていたためか、やっぱりしっかりとは思い出せない。
取りあえずこの桜の木と、勝紀にこの言葉を言いたい。
「ありがとう」と。
……そして、武内菜帆さん。
あなたにこの言葉を言いたい。
「好きです。今も、そしてこれからも」
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