門出

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目覚まし時計の不愉快な音と共に、いつもと変わらない薄暗い自室で目を覚ました。 しかし、俺は何処かに違和感を覚えた。 眠い目を擦り、ゆっくりと部屋を見渡す。高校入学時に新調した制服を見て、漸く今日が特別な日である事を思い出す。 「今日で卒業か……」 何となく暖かい布団の中で感傷に浸ろうとしてみた。 「弘康! 早く起きなさい」 母さんの大声が聞こえ、急いでベッドから抜け出してまだ肌寒い朝の部屋で制服に着替えた。 「慣れないことはするもんじゃねえな」 頭を掻きながら階段を降りていくとテーブルの上には既に朝食が並べられていた。 「いただきます」 慌ただしく準備をしている母さんをチラッと見て、箸を手に取り食べ始めた。
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