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俺は皆が通るすぐ近くの席だった。
だから、クラスメイトの一人一人を見ることができた。
当たり前だけど、誰もが俺には目もくれず、それぞれの卒業に対する想いを表した表情で歩いていた。
ただ一人を除いて……。
一瞬、涙目の彼女と目が合った。
……俺の思い過ごしか?
胸は高鳴り、今まで眠っていた思いがさらに勢いを増して心を満たす。
「やっぱり告るべきなのか?」
俺の頭の中には、卒業式の余韻なんてものはもう存在していない。
退場中も、体育館を出て先生達に拍手で見送られている時も、友達が話し始めても、彼女への思いだけが心を満たしていた。
「弘康。大丈夫か?
泣きたいなら泣けば?」
悪戯っぽく笑いながら、幼馴染みの勝紀が声をかけてきた。
「別にそんなんじゃねぇよ」
軽くあしらったつもりだったが、勝紀はさらに突っ込んできた。
「それとも……
あの人に告ろうか悩んでんのか?
今日がラストチャンスだもんなぁ」
勝紀は一層ニヤニヤと笑いながら、小声で言った。
「べっ……別にそんな……」
勝紀の言葉が図星だった俺は動揺を隠せなかった。
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