約束

3/3
前へ
/15ページ
次へ
――…10年前のクリスマス 「おれ、でかくなったら絶対百合と結婚する」 「わたしも」 照れ笑いを交わし合う幼い影。それは、夕日に照らされて長く伸び、二人の将来を映していた。 「じゃ、約束」 左の小指を差し出す少年。 「うん、約束」 応えるように、左の小指を絡める少女。 「左の小指ってね、運命の人と赤い糸で繋いでくれるんだって」 にっこりと話す、桃色の頬に笑窪が出来る。 「百合が運命の人だよ」 無邪気に笑うと、赤いダウンジャケットが擦れてビニールの音がする。 「結婚って、すぐには出来ないんだよ」 「大人になったら?」 「うん、そう」 「あと何歳?」 「うんとね」 少年は指折り数え始める。 「あと10回クリスマスが来たら」 陽が落ちていく。 「じゃあ、それまで忘れちゃわないでね」 首を傾げ、大きな瞳をくりくりさせ笑いかける。 「約束」 ――… 「…うそつき…」 .
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加