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――…10年前のクリスマス
「おれ、でかくなったら絶対百合と結婚する」
「わたしも」
照れ笑いを交わし合う幼い影。それは、夕日に照らされて長く伸び、二人の将来を映していた。
「じゃ、約束」
左の小指を差し出す少年。
「うん、約束」
応えるように、左の小指を絡める少女。
「左の小指ってね、運命の人と赤い糸で繋いでくれるんだって」
にっこりと話す、桃色の頬に笑窪が出来る。
「百合が運命の人だよ」
無邪気に笑うと、赤いダウンジャケットが擦れてビニールの音がする。
「結婚って、すぐには出来ないんだよ」
「大人になったら?」
「うん、そう」
「あと何歳?」
「うんとね」
少年は指折り数え始める。
「あと10回クリスマスが来たら」
陽が落ちていく。
「じゃあ、それまで忘れちゃわないでね」
首を傾げ、大きな瞳をくりくりさせ笑いかける。
「約束」
――…
「…うそつき…」
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