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薄暗い部屋の光となるかのようにブラウン管に映し出された世界の風景。 僕は小さなビニールの袋の端を掴み軽くテーブルに叩き付け、ハサミで上端を切り、綺麗に埃を拭き取った手鏡の上に米粒大の塊を置く。 カッターの刃の腹で塊が飛び散らない様ゆっくりと押し潰すと、塊は粉々になった。 更に細く、細く、刃先で刻み続けた。 刃の腹を舐めると、苦味がスッと溶けて喉を通り過ぎていった。 細い粒を刃で一本の線になるように調整。 ニヤけた面で紙パックのリンゴジュースについている少し太めのストローをハサミで切り、良く通る方の左の鼻穴に突っ込む。 右手人差し指で右の鼻を押し塞ぎ、鏡の上の粉をストローで滑らせながら一気に吸い込んだ。 左の鼻穴から首の裏にかけて強い痛みが走る。 左目からは涙がこぼれ、溢れる強い苦味を含んだ痰を何度も飲み込んだ。 次第に聞こえなくなる両耳のせいで、僕に独りの世界が迫ってくる。 小さな袋の上端を割り箸で挟み、少し余らせたビニールをライターの火で溶かして接着。 僕は目を閉じた。 ありえないスピードで進む時計の針を見ながら、懐しき昔を思い出していた。
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