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彼は、私の向かい側に腰を下ろした。
「アンタ、今いくつなの?」
「えっ? 21、です」
「ふぅん。煙草は吸う?」
「あっ、多少……」
私がそう答えると、彼はポケットから煙草を取り出し、
「吸う?」
私は、少し煙草と彼の顔を見比べたが、
「ありがとうございます」
煙草を1本いただいた。
しかし私は、それを吸わずにただ指の間にはさんだまま俯いた。
本当にほとんど吸わないのだ。
それに、今は煙草を吸うような気分でもなかった。
彼も煙草を口にくわえ、私のものに先に火をつけてから、自分のにも点火した。
おいしそうに白い煙を吐く彼の姿は、なんだか妙に色っぽい。
「しかし、急にどうしたの? 帰るだなんて」
「ああ……、父の仕事がうまくいってへんくて、それで父が無理をして倒れてしもて」
「まあ、それは大変じゃない」
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