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「はい……」
「それでアンタが実家に帰って、お父様のお世話をするってーの?」
「そうしよかと」
「お母様は?」
「母は、だいぶ昔に亡くなっとって……。家には、父しかおりませんのです」
「まあ……」
彼は、煙草を持った手を口元に当て、沈んだ表情をした。
その手の甲は、固そうで骨ばっていて、しっかりとした男のものだ。
「残念ねぇ。アンタとは話したことはなかったけれど、いつか語り合いたいと思ってたのに……」
「え?」
──なんでやろ?
「アンタおもしろいじゃなぁい?」
「おもしろい……?」
「そうそう」
笑いながら彼は、手の中のタバコを灰皿に揉み消した。
「毎朝ドッタンバタン家の中かけずり回っててさ。ウチまでつつ抜けなのよ。うるさいったら、ありゃしない」
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