D18 *1.幸せの小鳥

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『恭弥!』     馴れ馴れしく勝手に 人の名を呼び捨てで 連呼する家庭教師。 家庭教師といっても 赤ん坊が勝手に雇った 実力も分からない人間。   全てを飲み込む琥珀の瞳 蜂蜜色の髪と似通う 甘い表情に加えて 常につり上がる口端。 左手に刻まれる跳ね馬と 太陽を象るタトゥー。 生温い湯に浸かりきったか ふやけた思考回路   『恭弥!』   耳朶を刺激する、其の 高めの声に慣れた日本語。 常時浮かぶ柔和な笑み。 余裕を醸し出す雰囲気。 怪しく色付く鞭の漆黒。   そして間抜け面。     相手の特徴という特徴を 捉える小鳥は一つ鳴いた。   多分他の風紀委員に 訊ねてみたとしても 小鳥を見ただけで彼の 姿を浮かべる者は 皆無であろう。   灼かれる様な気持ち 焦がれる様な想い   自分の心、否、興味心を 颯爽と攫って行かれた 彼の姿が頭を埋め尽くす 自分自身の姿が   なんと、 憎らしいものか。   雲雀は薄く笑みを作る。    
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