D18 *1.幸せの小鳥

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「早く行くなら行こう。 日、暮れるんだけど」   何事もなかったような 言葉を相手に告げると 屋上に向かうために 相手の返事も待たずに さっさと歩いてしまう。   靴の音で相手がついて 来たことがわかるが 振り向かずに 足は止めぬまま。   急かすように速まる 自分のスピードは 相手との距離を 置くためだけで。   近づきすぎず、 離れない。   僕の一番居心地の 良いと思える位置。 遠すぎるのも 近すぎるのも 今の僕はいやだから。 自我を保てる この距離で 貴方と一緒にいる事が 今僕が一番求めている事。   肩に乗っている 軽くて黄色い小鳥 君は僕に近すぎる   囁き掛けるような 小声で呟いた。     「君には違う名前を つけるから待ってなよ。 あんな名前…           君には勿体ないだろう?」           あの人以外の 『ディーノ』なんか 僕には一生いらない。  
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