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「い、今はそんなことない!」
「じゃあチョコアイス嫌いになった?」
「ううん…」
「ははっ変わってねーじゃん!」
民家がひたすら建ち並ぶ道を、アイスを頬張りながら進む。
「ちょっと寄り道」
「え?あっ!」
司が私の手を握り、強引に連れてゆく。
「ちょっ!どこへ行くのよ!」
「いいだろ、ちょっと付き合えよ」
海と真逆の方向へ私たちは向かっていた。
彼に進路を委ね、私は彼に連れられるがまま手を引かれる。
夏休みに入ったばかりの町並みは、平然と相変わらずにいつもの風景を作り上げている。
度々民家から聞こえる風鈴の音が、今が夏である事を実感させる。
田舎町。私の愛する町。
彼と歩く道。
ごみ箱を漁るカラス、カラスを狙う野良猫。
重荷を運ぶ蟻の行列。
せわしく鳴き続ける蝉時雨。
水かけをして遊ぶ子供達。
日に焼け始めた私の肌。
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