最終章 私とあなたの七日間

13/23
前へ
/214ページ
次へ
彼は笑顔であの歌を歌う。 子供の頃、彼が憧れていたヒーローの歌を。 私はサチオマンを見たことはなかったけど。 「あ、見えたぞ!千年樹!」 彼が走るものだから、手を繋いでいる私も自然と走ってしまう。 そして、目の前の千年樹。 その大きさは相変わらずの威圧感を放ち、私は少し気圧される。 でもあの頃と比べると、この木がいくらか小さく見えるのは、きっと私が大きくなってしまったということなんだろう。 「はははっ気持ちいいなぁ~」 彼はかなり傾いてきた太陽の光を右手で遮り、遙かに広がる水平線を眺めていた。 風はここらではどこよりも強く吹いて、まるで夏ではないような錯覚を起こす。 「地球の丸みが見えるぜぇ~」 「そんなわけないでしょ」 ツッコミを入れながら私はクスクスと小さく笑った。 何がおもしろいのか自分でもよくわからなかったけど、そうしていたかったんだ。
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1910人が本棚に入れています
本棚に追加