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彼は笑顔であの歌を歌う。
子供の頃、彼が憧れていたヒーローの歌を。
私はサチオマンを見たことはなかったけど。
「あ、見えたぞ!千年樹!」
彼が走るものだから、手を繋いでいる私も自然と走ってしまう。
そして、目の前の千年樹。
その大きさは相変わらずの威圧感を放ち、私は少し気圧される。
でもあの頃と比べると、この木がいくらか小さく見えるのは、きっと私が大きくなってしまったということなんだろう。
「はははっ気持ちいいなぁ~」
彼はかなり傾いてきた太陽の光を右手で遮り、遙かに広がる水平線を眺めていた。
風はここらではどこよりも強く吹いて、まるで夏ではないような錯覚を起こす。
「地球の丸みが見えるぜぇ~」
「そんなわけないでしょ」
ツッコミを入れながら私はクスクスと小さく笑った。
何がおもしろいのか自分でもよくわからなかったけど、そうしていたかったんだ。
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