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彼は唐突に告げる。
「それもあと少し…」
わかっていた。
「ごめんな瑠璃。あと少しだけ俺の妻でいさせてくれ」
わかっていたんだ…。
彼の手を握る私。
その手の感覚を忘れないように、私はいつもより強く握る。
彼も少し震える手で強く握り返してきた。
繋がれた二人は、ただ何も言わずに歩きだした。
導かれるように。
二人は終着点へと向かう。
私とあなたの最後の場所へ…
「俺はずっとお前を見てた。神様は俺の願いを叶えてくれたんだ…。この7日間、最高に楽しかったよ…」
繋いだこの手は離したくなかった。
この防波堤から見える海は綺麗で、いつまでも消えて欲しくはなかった。
ここから楽しい毎日が続けばいいなと、脆弱な願いを思う私がいた。
どの願いも叶わない。
「これから先、お前には大切な人が側にいてくれる。きっとあいつならお前を幸せにしてくれるはずだ」
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